まずから唐紙とは?
町家の秘密 ~ 2024年9月 ~

「にほん」の「ほんもの」を巡る旅マガジン

ー 「NIHONMNO」より抜粋 ー


唐紙(とうし)とは読んで字のごとく、中国から伝わった製法で作られた紙のこと。平安時代に唐から伝わったときには、そのすべてを 唐紙と呼んでいたが、その後に日本でも作られるようになった紋唐紙のこと を唐紙というようになった。
唐紙とは、雲母(キラ)や絵の具を板木にのせて文様をうつしとった美しい紙である。
その美しさから、当初は歌を書き付ける紙として使われていたが、後に室内装飾へと移行し、江戸時代以後は幅広く現在のように襖や壁紙などにも使われ、寺社仏閣や公家や大名屋敷、商家や町家など人々の暮らしを彩るようになった。

唐長とは?


桂離宮や二条城、養源院など数多くの歴史的建造物に「唐長(からちょう)」の仕事は伝えられ、修復も手掛けている。
江戸時代には十数軒あった唐紙屋も、幕末以後、文明開化や戦争などの変化に伴い全て廃業し、日本に唯一残り続けているのが「唐長」で唐長本店・雲母唐長は、唐紙づくりでは、まず、ふるいと呼ばれるうちわのような道具に雲母や顔料を塗りつけ、それをポンポンと叩き、文様を彫った板木に色を落とす。その板木に和紙をのせて、丁寧に写し取る。普通の木版画のようにバレンでゴシゴシと押し付けるのではなく、手でやさしく紙へと文様を写していく。
創業は約400年前という「唐長」には、1791年に製作された最古の板木をはじめ、約650枚もの板木がある。それらの板木はどれも現役で、色の組み合わせにより、時代にあう新たなものを生み出していく。現在は、襖や屏風などこれまでの用途に加え、タペストリーや額、カードやレターセットなど、さまざまな商品を作り、伝統を残す努力を続けている。伝統を受け継ぐだけでなく、独自の美意識で衣食住の時間と空間を提案し、和紙以外の異素材や他者とコラボレーションしたプロダクトを発表するなど、文様と色の美を通じて人々の暮らしを豊かにしたいとの思いを込めて新しい伝統の形を創造している。
話しは前後するが、「唐長」の初代・長右衛門は元々北面の武士であり上皇の院の御所を警衛する武士だった。初代・長右衛門が武士の身分を捨て唐紙師になったと伝えられており、芸術村を築いた本阿弥光悦と関わる中で嵯峨に住む角倉素案や光悦が手がけた「嵯峨本」の仕事にも関わったとされ、その子孫もまた唐紙の仕事を受け継いで来た。


ここからは13代目トトアキヒコさんの言葉から抜粋

ー 唐長ホームページより ー


文様には、四季折々の花鳥風月から幾何学文様まで多種多様な種類があり、それぞれが意味や物語を持っています。どの文様にもメッセージや物語と魂が宿り、単なるデザインという言葉ではあらわせません。そして代々守られてきた板木には、そこに潜んでいる文様の神々や、人間の祈りが宿ります。目に見えぬ力を帯びた板木から、心を込めてうつし取ることこそが唐長の唐紙であり、文様であると私たちは伝えてきました。
また、文様には、そもそも身を守る力があり、それぞれの文様には意味や物語が宿ります。魔除け、厄除け、浄化、守護、長寿、息災、健康、成長や繁栄、希望、多福、開運、家運上昇に商売繁盛、子孫繁栄、夫婦円満、縁結びなどたくさんの力が文様には秘められています。人が幸せを求め、より良くなりたいという思いは誰もが持つ共通の願いのはずです。唐長の文様にそういった人々の願いや思いが込められているならば、「文様はすべての人々にとって手に取る価値あるもの」だと信じ、伝えてゆこうと思いました。幾多の天災、人災、戦争や時代の変化などを乗り越えて文字通り奇跡的に守り、先祖代々継承してきた特別な力が宿る「唐長文様」と美の力で人々の暮らしや人生時間を包むことは、私たちの願いです。

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